多田消化器内視鏡クリニック

2019.06.10

疾患紹介編:#1 大腸憩室
初回は、大腸カメラを受けるとよく指摘されるけれども、あまり詳しく説明してもらえない大腸憩室について、くわしく紹介します!


大腸憩室とは、大腸内の腸管内圧が上昇することにより、大腸の一部が袋状に腸管外に突出した状態です。
大腸カメラでは、へそのようなくぼみとして観察されます。(下図①)
先天性の憩室と、後天性の憩室がありますが、後天性がほとんどで高齢の方によく見られます。
大腸憩室が出来る原因としては
・大腸内圧の上昇
・腸管壁の脆弱化
があげられます。
便秘などで、大腸の内圧が上がると、腸管壁を支える筋肉が弱い部分が圧に負けて外に飛び出してしまい、袋状に膨らみこれが憩室となります。
特に血管が通る部分は筋肉が薄く飛び出しやすいと言われています。
また、加齢により腸管を支える筋肉が薄くなることも憩室が出来る要因であり、このため高齢の方に大腸憩室がよく見られます。(下図②

<症状>
憩室は、それだけでは症状がないことがほとんどです。
ただ、憩室に便がはまり込んだりすると、細菌が繁殖して「憩室炎」という状態をおこすことがあります。憩室炎をおこすと、腹痛・発熱などの症状が出ます。
特に憩室は上行結腸とS状結腸に出来やすいため、左右の下腹部に痛みを来しやすいです。
放っておくと悪化して穿孔(腸に穴があく)することもあるため、症状がある場合は早めの受診が大切です。 
また、前述のように憩室は血管のわきに出来やすいため、出血を来すことがあります。これを「憩室出血」とよびますが、時に大量の下血を来し貧血やショック状態になることもあるので、憩室炎同様、下血を来した場合は早期の来院が重要となります。

<治療>
大腸憩室症は病気というよりは、腸壁の形の変化です。ほかの例えで言うなら、顔にできるしわのようなものだと考えてください。
たとえ憩室がたくさんできていても、症状がなければ治療は必要ありませんし、日常生活の特別な制限もありません。
強いて言うなら、比較的線維分の多い食事の摂取を心がけるとともに、便秘をしないよう便通のコントロールを行うことを心がけてください。


検査報告書に「憩室あり」と書いてあってもあまり心配しないでください。何かで病院を受診する際に、「そういえば、大腸に憩室があるって言われてます」と申告できるように頭の片隅に置いておいてくだされば、それで十分です。
検査結果説明の時にもできるだけお伝えするようにはしていますが、聞き足りないこと、気になることがあれば遠慮なくおっしゃってくださいね♪

次回は、ピロリ菌について書こうと思っています。