多田消化器内視鏡クリニック

2020.01.23

疾患紹介編:#3 ピロリ菌 part 2
さて、それでは実際のピロリ菌の診断治療について説明していきます。

ピロリ菌が自分の胃の中にいるかどうかを調べてもらうためには、特殊な病気にかかっておられる方を除いて、皆さんまずは胃カメラを受けていただく必要があります。

胃カメラにより、「萎縮性胃炎(慢性胃炎)」あるいは「胃・十二指腸潰瘍またはその瘢痕」を確認できた方のみが
ピロリ菌の検査を受けることができます。
胃カメラの結果、「あなたの胃は非常にきれいなので、ピロリ菌はいないと思いますよ」と医者に言われたら・・・、それで終わりです。ピロリ菌の検査は受けれません。

医者の目が信用できない方や、胃カメラ抜きでピロリ菌検査を受けたい方は、「人間ドック」や市民検診の「胃がん
リスク検診」(40代に限る)で調べてもらうことも可能です。
ただし、ピロリ菌がいることが分かり、除菌を希望される場合は、薬処方前に必ず胃カメラを受けて頂き胃がんの存在を否定する必要がありますのでご注意ください。(図1)


ピロリ菌の検査は、いるかどうかを調べる「感染診断」と、除菌治療が成功したかどうかを確認する「除菌判定」の
2回行うことになります。

ピロリ菌検査には様々な方法があり、患者条件や、存在診断用なのか除菌判定用なのかで使い分けます。(図2)
胃カメラでの判断と異なる結果が出た場合や、結果が弱陽性で菌がいるかどうか疑わしい場合などは、異なる検査法でもう一度調べることもあります。
当院では、「感染診断」では胃カメラ中に迅速ウレアーゼ試験や検鏡法を行ったり、血液検査で抗ピロリ抗体を測定し、「除菌判定」には便中ピロリ抗原を測定しております。


ピロリ菌の存在が判明したら除菌薬を処方致します。
内容は胃薬と2種類の抗生剤(クラリスロマイシン・アモキシシリン)です。
7日間、3種類を同時に朝夕の2回服用して頂きます。(図3)

副作用としては、下痢や嘔気・腹部膨満感といった消化器症状や皮疹、味覚障害・口内炎などが起こりえます。
基本的には服薬終了とともに改善しますので、軽度なものは様子をみながら服薬を続けて頂きたいのですが、
もし心配なほどの症状が見られるようであれば速やかにご相談ください。


治療は薬を飲み終われば終了です。

服薬終了後、1か月以上の間を空けて除菌判定検査を行います。(当院では余裕を持って2カ月空けて頂いています)
除菌成功率は90%程度といわれておりますが、残念ながら、中には除菌しきれない方もいらっしゃいます。
その場合は、クラリスロマイシンをメトロニダゾールへ変更した二次除菌を受けて頂けますのでご相談ください。


無事除菌が成功しましたら、胃炎による胃の荒廃進行が止まり、胃がん発生率の抑制ができたとお喜びください。

ただし、「胃がんにならない身体になった」訳ではありませんので、「もう、胃カメラはうけなくていいんだ」とは
誤解しないでください。
除菌成功時点での胃の荒れ具合に応じて、その後も定期的な胃カメラ検診が推奨されますので、医師の説明を良く聞くようにしてください。


ここまで基本的なお話を書いてきましたが、最後に、専門医でありながらの勝手な私見を書きます。

ピロリ菌除菌は胃がん予防の観点から推奨されています。
しかし、日本人の半数以上に感染があるにも関わらず、その全員が胃がんを発症するわけではありませんし、仮に胃がんが発生したとしても、それが増大し命を奪うほどになるまでには何年もかかります。
また、除菌治療を行い無事成功しても、その後に胃がんが出てくることもあり、除菌後も定期的な胃カメラ受診が推奨されています。

つまり、検診として定期的に胃カメラを受けていてさえくれれば、除菌に躍起になることは無いともいえます。
特に2次除菌も失敗してしまった方や超高齢の方は、あえて除菌治療は行わず、数年ごとの胃カメラ検診を受けることをお勧めします。

以上、ちょっと長くなりましたが、これで一旦ピロリ菌のお話を終わります。
次回は、誤解されている方をよく見かける大腸がん検診(検便)について書くつもりです。