多田消化器内視鏡クリニック

2020.02.23

疾患紹介編:#4 検便 (大腸がん検診)
今回は、「大腸がん検診=検便」について、みなさんから良く上がる質問について解説していきます。
職場の検診や人間ドックで必ず含まれる「検便」。市町村の大腸がん検診としても受診することが可能です(堺市では40歳から受けれます)。

Q1. なぜ検便検査が必要なの?

人の体で「がん」が出来やすい部位は決まっています。肺・胃・肝胆膵・腎・(男性なら前立腺、女性なら乳房・子宮卵巣)、そして大腸です。
大腸以外の部位は比較的検診しやすいのですが、大腸がんの有無を調べる大腸カメラは、準備や検査に時間を要し、また、検査を行う医者の数も足りていません。そこで、まず検便を行うことで、大腸カメラを受けた方が良い人を選別しているのです。

血便が出たり、身近な人が大腸がんを患ったりした方は、進んで大腸カメラを受けに病院を受診してくださるので問題ないのですが、無症状の人でも大腸がんが出来ている人はいらっしゃいます。そんな方に病気に気づいてもらうための方法が検便なのです。
症状が出てから「がん」の存在に気付いた場合、手の施しようが無くなっていることもあります。症状が無くても、定期的にチェックを受けることが重要です。

Q2. 検便検査が陽性って、どういうこと?

検便検査では、目には見えない血液が便に混じっているかどうかを調べています。
混じっていないのが普通で、その状態が「陰性」です。
血が混じっていれば「陽性」と診断され、何らかの血が出る原因が潜んでいると考えます。

当然、切れ痔や生理出血などでも陽性となりますが、可能性の中で最も恐ろしいものが「がん」です。血が混じったというだけでは何が原因であったかまではわかりませんので、大腸カメラを受け、病気の有無を確認することが重要です。
「痔だから陽性になった」とは思い込まずに、必ず精密検査を受けてください。

ただ、実際に大腸カメラを受けても、「がん」どころか「ポリープ」すら無かったということも良くあります。こんなときは、「こんなことならカメラを受ける必要はなかったじゃないか!」と怒らず、「何もなくて良かった^^」と喜んでください。
検便検査陽性とは、「何か病気があるかもしれない」ということであり、大腸カメラは「病気があるかないかを確認する」目的で行うものだからです。

Q3. なぜ2回も取る必要があるの?

仮に、大腸がんがあったとして考えてください。便が「がん」の横を通過する際に、擦れて血が滲みでたら検査が陽性になるのですが、時には血が出ないこともあり得ます。
「がん」を見逃すことが無いように、「がん」が潜んでいる場合にはきっちりと陽性の結果が出るように、回数を増やし感度を高めているのです。

施設によっては3回出すところもあり、回数が多ければ多いほど感度も上がることにはなりますが、採便・提出の手間も考慮し、2回法が主流となっています。

前述の事から、1回でも陽性の結果がでたら、大腸がんの可能性があるとのことですので、必ず、大腸カメラを受けるようにして下さい。
中には、大腸カメラを受けたくないがために、もう一度、検便検査を行い、陰性が出たら安心されている方がおられるようですが、これは大きな間違いです。
せっかく、「がん」を早期に発見できるチャンスを、みすみす捨てるようなものです。
繰り返しますが、1度でも陽性が出た方は、観念して大腸カメラを受けるようにして下さい。

あと、検査提出のタイミングに合わず、1日の便から2個検体を取って出したというお話も良く耳にします。これ自体は仕方がないことですが、病気があっても、血が出る日もあれば出ない日もあることを考えると、余裕を持って別日で採便することが望ましいということを忘れないでください。

Q4.  便に血が混じってるって・・・、胃は心配ないの?

近年の大腸がん検診では、「免疫法」といった手法で検査を行っています。
血液に含まれる「グロビン」という物質を検出する検査ですが、この「グロビン」は十二指腸で消化分解されてしまいます。そのため、十二指腸を経由する食道や胃での出血については、検便では検知されません。免疫法は大腸出血に特異度が高いということになります。
職場検診やドックでは、胃バリウム検査と検便がセットになっているのも、これが理由です。市町村の大腸がん検診=検便を受けられる方は、胃がん検診も併せて受けられることをお勧めします。

Q5.  検便検査が陰性だったら、大腸がんは心配ないの?

これもみなさんが良く誤解されているポイントです。
繰り返しになりますが、かりに病気があっても、血が出る日もあれば出ない日もあります。
残念ながら、検便検査が陰性であったからといって大腸がんの心配が全く無いというわけではありません。
がん年齢の人については、検便検査が陰性であっても大腸カメラを受けることには意味があると思われます。
「一生に一度でも大腸カメラを受けると、大腸がんで命を落とす確率が半減する」といった報告もありますので、
50歳・60歳・70歳などの節目に受診されることをお勧めします。



僕自身も、33歳と43歳時に大腸カメラを受けました。
お尻がムズムズ、お腹の中がグニュグニュと、少しの不快はありましたが、上手な先生にお願いしたおかげで楽に受けられ、病気もなくホッとした記憶があります。

当院でも、希望者には麻酔をしっかり使い、苦痛の出ないように細心の注意を払って検査をさせていただきますので、ご心配なくご相談ください!