多田消化器内視鏡クリニック

2020.09.13

疾患紹介編:#8 胃ポリープ
バリウム検査や胃カメラで良く指摘される胃ポリープ。
中にはポリープから組織を取って検査してもらったという方もいらっしゃるのでは。
みなさんは、「ポリープ=悪いもの」と思っていますか?

今回は胃の検査で指摘される頻度の高い胃ポリープについて解説したいと思います。


ポリープとは、胃の壁にできるいぼ状の隆起物のことをいいます。

<分類>

顕微鏡による分類(組織学的分類)では以下の2つに大別されます。
1)過形成性ポリープ  2)腺腫性ポリープ

さらに、1)はその発生源から3つに分類されます。
① 腺窩上皮性  ② 幽門腺性  ③ 胃底腺性

ただ、臨床上はその頻度や成因から、①②をあわせて「過形成性ポリープ」、③については別個に「胃底腺ポリープ」と呼んでいます。
また2)については一般的に省略して「腺腫」と呼んでいます。

以上をまとめると、検査の結果、先生から告げられるポリープの病名としては、
・ 過形成性ポリープ
・ 胃底腺ポリープ
・ 腺腫

のいずれかになるわけです。


<特徴>
過形成性ポリープ(図1)
赤みが強く凹凸が目立つため、「腐れイチゴ様」とも称されます。
胃のどの部分にもみられ、大きさは大小様々で、単発の場合もあれば多発することもあります。
基本的には、ピロリ菌陽性の炎症の強い胃に発生します。
ピロリ菌を除菌し胃の炎症が引くと、縮小・消退することがありますので、ピロリ菌が陽性の場合はまずは除菌治療を検討します。
大きさが2cmを超えるものは、頻度は高くありませんが癌化の可能性があり、また、貧血の原因となる事も多いため、内視鏡による切除を検討します。

胃底腺ポリープ
(図2)
検診バリウムでポリープを指摘されたと来院される方のほとんどがこの種類であると言っても過言でない、頻度の高い種類です。
周囲の粘膜と同じような色調で表面はツルっとしており、大きさも5mmまでのちいさなものがほとんどで、胃体部(とくに大弯)に多発する事が特徴です。

成因はよくわかっておりませんが、ピロリ菌感染の無いきれいな胃に発生するタイプであるため、このポリープがあれば、「あなたの胃はきれいだ」といわれているのと同義と考えてください。
このポリープは特殊な場合を除いて、癌化することはまずありませんので、組織検査をするのは初回検査時だけで十分です。ポリープを摘除する必要もありません。

唯一悩ましいのは、このポリープは勝手に消えることはありませんので、検診バリウムを受ける度に「ポリープあり、要精密検査」と言われてしまう場合があることです。
胃カメラの検査結果を事前に提示するなどの対処を試みるか、思い切って検診は胃カメラで受けるようにしてください。胃がんのできにくい胃ですから、検診は3年に1回も受けて頂ければ十分と考えます。

補足ですが、胃酸を抑える薬を長期服用している方では胃底腺ポリープが増加・増大する傾向があると報告されています。薬を中止することで改善するとも言われていますので、気になる方は主治医にご相談ください。


腺腫(図3)
ピロリ菌によって高度に荒廃した胃粘膜に発生する腫瘍性ポリープです。
白色調を呈する事が多く、形態は平坦なものから丈の高い結節状を呈するものまで様々です。

前癌病変と考えられているものの本病変は良性であり、小さなものは1年ごとの経過観察で問題ありません。

大きさが10mmを超えるようなものや、発赤が強いもの、陥凹を伴うもの、さらには、経過観察中に増大傾向を呈するものは癌化率が高い(20-30%)と報告されており、内視鏡切除の適応と考えます。
私はこれまで同疾患を含む早期胃がん等の内視鏡治療を数多く経験してきましたので、治療を受けるかどうか悩んでおられる方は、是非当院に相談にいらしてください。



「ポリープ」といわれても、その種類によって対応は様々です。
結果説明の際の先生の説明を良く聞くとともに、検査結果報告書の病名欄もしっかり確認、記録し、本内容を参考に今後のフォローをご検討下さい。