多田消化器内視鏡クリニック

2021.02.14

疾患紹介編:#9 大腸ポリープ
さて、クリニックのICT化を優先していたため長らく更新が止まっておりましたが、今回は当院にとっても大事なテーマ「大腸ポリープ」を取り上げたいと思います。


皆さんは大腸カメラを受けられたことはありますか?
40歳を越えて一度も受けたことがない方は、機会があればぜひ一度受診してください。
検査の目的は、もちろん「がん」が無いかどうかを確認するためですが、合わせて「大腸ポリープ」の有無も確認し、有れば切除してしまうことです。

大腸の壁にできる良性の腫瘍のことを「大腸ポリープ」と総称します。
「良性なのに切除する必要があるの?」と疑問に思われる方がいらっしゃると思いますが、正確に言うと、「現在は良性」なのであって、何年も放置すると「がん」になる可能性を秘めているからなのです。

大腸がんの大半は、ポリープが増大し「がん化」して出来ると考えられています。つまり、「大腸ポリープ」を発見し切除することは、「がんの芽を摘む」こととも考えられます。
大腸カメラは、時間的・経済的・体力的に大きな負担がある検査ですので、毎年毎年受けるようなものではありません。40歳、50歳などキリの良い年齢で受診し、ポリープが見つかれば切除を受け、大腸がんの予防に努めることをお勧めします。



それでは、ここからは「大腸ポリープ」をさらに深く掘り下げていきます。

「大腸ポリープ」は主に次の3つの種類に分類されます。

<腺腫>
古くから大腸がんの種として考えられてきた種類で、腺腫からがんが発生する機転をadenoma-carcinoma sequenceと呼びます。
全結腸を通じて見られ、いわゆる「いぼ状」のものが多いですが、形や大きさ・色調は様々です。
担癌率は報告により幅はありますが、5mm以下で0.5%、5~10mmで3%、10~20mmで20%、20mm以上で50%程度です。

<過形成性ポリープ>
直腸からS状結腸にかけて多発する小型の白色ポリープのことを指し、次にお話しする「鋸歯状病変」の一種になります。
過形成性ポリープはがん化しないとされており、基本的には切除の対象となりません。

<鋸歯状病変>
顕微鏡でポリープの表面を観察した際に、表面がのこぎりの刃の様にギザギザして見えるポリープを「鋸歯状病変」と呼びます。
これまで、「過形成性ポリープ」と「鋸歯状病変」の分類は曖昧でしたが、近年、上行結腸から下行結腸に発生する「鋸歯状病変」が腺腫に匹敵するがん化率があると報告され、注目を集めています。粘液の付着した白色半透明の扁平隆起として観察されるのが特徴です。
鋸歯状病変からのがん化機転をserrated pathwayと呼びます。
まだ新しい概念の病変で、臨床上では慣習的に「鋸歯状病変」≒「過形成性ポリープ」としてお話ししています。(ここ、ややこしいポイント)


切除方法は、小さなものに対してはスネアと呼ばれるワイヤーで、絞り切る手法が主流です。切除時は少々出血しますが、血が固まりカサブタとなることで、後々の出血のリスクは抑えられます。(コールドポリペクトミー:CP)
首の長いキノコのような物や、平べったく大きく横に広がっている物に対しては、病変の下に生理食塩水を注入して盛り上げたり、電気を流して焼き切る手法を用います。(粘膜切除術:EMR)
大きすぎ、当院で手出しできないレベルのものが見つかった際は、病院へ紹介させていただきます。
切除にかかる時間は、1個につきCPで2-3分、EMRで5分長くなる程度です。
ポリープ切除を行った場合は、帰宅後の注意事項が何点かありますが、日帰り可能です。


治療対象としてガイドラインで提唱されているのは、5㎜以上の「腺腫」・「鋸歯状病変」ですが、当院では以下の理由で、見つけたポリープは、明らかに「過形成性ポリープ」と判断できるもの以外はすべて切除することとしております。
報告された担癌率は、切除された時点でのポリープのサイズに則ったものであり、将来的にサイズアップすることを見越しての話ではない。
内視鏡機器の進歩とともに、ポリープの種類を推察することが可能になりつつあるが、絶対ではない。特に、「過形成性ポリープ」と「鋸歯状病変」の鑑別は難しい。
ポリープがあることを分かっておきながら残しておくことは患者の精神的負担と成りえる上に、そのフォローのために定期検査を行うことはメリットが少ない。

当院では、積極的にポリープを切除してしまい、無駄な頻回検査を減らすべきと考えています。次回大腸カメラ受診時期については、日本で行われた研究(Japan polyp study)の結果に基づいて、以下の基準を設けております。

<以下に該当する方> 1年後再検査
ポリープが6個以上あった方
10㎜以上のポリープがあった方
管状絨毛腺腫または早期がんがあった方

<初回検査で、上記に該当しない方> 
希望者は1年後、それ以外は3年後

<2回目以上の検査で、上記に該当しない方> 
5年後以降(アメリカでは5~10年後、ヨーロッパでは10年後が目安)


アメリカからの報告で、「ポリープを切除することにより、大腸がん罹患率が76~90%抑制可能であり、さらには53%の死亡率抑制効果が得られる」とされています。
日本の大腸がん罹患率は年々増加しており、男性では3位、女性ではなんと、1位となっています。
前述したように、大腸カメラは毎年受けるような検査ではありませんが、適齢になられた方は、症状がなくとも一度は受診を考えていただきたいと思います。